狭い通路における対向車(自動車)同士のすれ違い事故()
1 過失割合50:50になることが多い
中央線の表示もない狭い道路における対向車(自動車)同士のすれ違い接触事故で、同じような速度で進行して接触した場合、実務上は、過失割合は50:50になることが多いと思われます。それは、運転中の安全確認などの義務がすべての運転者に課せられているため、事故にあったのは各運転者が安全確認を怠った結果とみなされるからです。
2 過失割合50:50の場合の具体的解決方法
その場合、過失割合に応じて減額した支払を双方が行うほか、自損自弁で解決することもあります。自損自弁とは、自分の修理代金は自分で支払うが、相手の修理代は一切支払わないという解決方法です。相手からは賠償してもらえない代わりに相手に賠償金を支払わなくても良いことから、このような方法で合意する場合もあります。
3 センターオーバーの場合
ただし、一方の車が道路中央を越えてきた、いわゆるセンターオーバーの場合には、100:0になることもあります。センターオーバーは交通ルールに違反する行為であり、通常の安全確認の問題とはかけ離れた異常行動とみなされ、そのような異常な運転まで想定して安全を確認を行うのは現実的ではないからです。
なお、センターオーバーの車を発見した後、進路を左に変更し、あるいは遅滞なくブレーキを踏めば、容易に衝突を回避することができたにもかかわらず、相手の車がすぐに自分の車線内に戻るであろうと思い込み、あるいは、前方不注視のため、事故を避ける措置をとることができなかった場合などには、100:0にはならないこともあります。また、中央線の表示もなく、狭い道路における事故の場合には、左側部分を通行していた車両といえども、対向車の進路に対する相当の注意が要求されるため、100:0にはならないことがあります。
4 その他の場合の過失の修正
一方の車が道路中央に寄っていて、一方の車が路肩すれすれまで寄っていて接触した場合には、その度合によって過失割合が変化することになります。
さらに、一方通行路や道路左側部分の幅が車両の通行のため充分でないとき、道路の損壊や道路工事等の障害のため道路左側部分の通行ができないとき、左側部分の幅が6メートル未満の道路において他の車を追い越すとき、勾配の急な道路の曲がり角付近について、道路標識等により通行方法が指定されているときなど、道路中央から右の部分にはみ出して通行することができる場合(道路交通法17条5項各号)も、双方の速度や道路状況等によって過失割合が変化することになります。
5 証明に関する問題
当事者間で事故態様に争いがある場合、双方の車両が、道路の左側部分を通行していたか、道路の左側に寄って通行していたかなどを確定するには、ドライブレコーダーの画像があり、かつ鮮明であるか、目撃者がいるかなどが問題となります。特に、狭い道でのすれ違い事故の場合は、双方が低速度で進行していることから、物損事故にとどまることが多く、よって実況見分調書等が作成されない場合が多いので、これらのことが重要になってきます。
6 少額訴訟の利用
また、狭い道でのすれ違い事故の場合には、低速度での衝突であって損害が60万円以下になることが多いため、過失割合に争いがあり、交渉で解決できない場合、少額訴訟の利用が多くなります。