コラム

 

被害者等による刑事事件記録の利用  (弁護士 佐藤初美)

平成29年2月14日

1 刑事記録の利用(閲覧・謄写)の重要性

事故原因、過失割合などに争いがある場合(事故当日、加害者が事故を起こした原因が自分にあることを認めていたような場合でも、加害者が、後になって否定してくることもままあります。)、実況見分調書・事故関係者の供述調書、その他の刑事事件記録の利用が事件の解決に重要な役割を果たすことになります。また、被害者参加制度を効果的に利用するためにも、刑事事件記録の利用は重要です。その前提として、交通事故があった場合には、警察に申告して、実況見分を実施してもらい、事故により怪我を負った場合には、速やかに、医師の診断書を警察に提出しておかなければなりません。
 

2 刑事記録の利用法(民事裁判手続を利用する場合を除く)

加害者の刑事処分の状況や刑事処分の結果により、被害者等が利用できる刑事記録の内容や閲覧・謄写の方法が変わります。
 
(1)不起訴事件記録・第1回公判期日前の刑事事件記録・公判不提出記録の場合
原則として、非公開です(刑事訴訟法47条)。なお、被害者の場合、捜査状況の説明のために、実況見分調書などを見せてもらえる場合はあります。
例外として、不起訴になった刑事事件記録については、一定の範囲で閲覧・謄写が認められます。すなわち、まず、被害者参加制度対象事件(危険運転致死傷罪、業務上過失致死傷、自動車運転過失致死傷の罪、自動車等を使用して故意に人を死傷させた殺人罪等やこれらの未遂罪)では、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はそれらの代理人たる弁護士、被害者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹の方々についても、刑事記録を閲覧するために検察庁に請求すれば、実況見分調書・信号のサイクル表等(実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠について、原則として、代替性の有無にかかわらず、相当でないと認められる場合を除き、閲覧を認める。)が閲覧可能です。ただし、関係者の名誉・プライバシー等にかかわる部分はマスキングされます。次に、被害者参加制度対象事件以外の事件では、より厳しい要件(客観的証拠であって、当該証拠が代替性に乏しく、その証拠なくしては、立証が困難であるという事情が認められるものについて、閲覧・謄写の対象とし、代替性がないとまではいえない客観的証拠についても、必要性が認められ、かつ、弊害が少ないときは、閲覧・謄写を認める。)のもと、閲覧・謄写が可能です。詳しくは、法務省のhttps://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji23.html参照。
また、被害者参加対象事件の被害者については、刑事裁判として起訴された後、第1回公判期日前の刑事記録のうち、刑事裁判で証拠として提出される予定の記録について、閲覧謄写が認められています。
なお、物損事故については、事故のときの双方当事者の位置関係など事故状況の概略が図示されている物件事故報告書を警察署から取得できる場合があります。取得するには、弁護士に依頼し、弁護士会照会制度を利用する必要があります。弁護士会照会制度を利用しても取得できない場合がありますが、取得できれば、「事故直後に警察が当事者の話しと現場の状況をもとにまとめたもの」として、弾劾証拠(人の証言や供述等の信用性を攻撃し低下させるための証拠)として利用するなど、事案によっては有力な資料になることがあります。
 
(2)第1回公判期日後、事件終結までの刑事事件記録
第1回公判期日後は、犯罪被害者保護法第3条の規定により、裁判所に申請することにより、閲覧および謄写をすることができます。(刑事被告事件の係属する裁判所は、第1回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせる。)
 
(3)確定した刑事事件記録
判決の言渡日の翌日から数えて14日目、つまり15日目に判決が確定(上訴できなくなること)すれば、被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、検察庁に請求すると、実況見分調書だけでなく、被害者及び加害者の供述調書などが開示され、閲覧・謄写が可能です(刑事確定訴訟記録法)。なお、保管期間などもあるため、なるべく早く請求すべきです。
 

3 少年保護事件の記録の利用法

加害者が少年の場合には家庭裁判所に申出して、「法律記録」を閲覧・謄写することになります(少年法5条の2)。
 

4 刑事事件の処分状況の調査

 刑事記録を利用するためには、加害者の刑事事件の処分が今、どのような状況になっているのかを知っている必要があります。加害者の刑事事件の処分状況については、次のように調べることが出来ます(被害者の方又はご家族に限ります)。
 
(1) 事件を担当した警察に、①検察庁に事件を送致したか、②送致したのであれば、いつ、どこの検察庁に送致したかを聞く(本人確認ができれば、電話で教えてもらえることもあります)。
→「被害者連絡制度」(殺人、1か月以上の重傷を負った傷害等重大な身体的被害、ひき逃げ事件、交通死亡事故、人が全治3か月以上の傷害を負った交通事故事件、危険運転致死傷罪、無免許危険運転致傷罪、無免許危険運転致死傷罪について、警察の捜査活動の状況や被疑者の検挙及び起訴・不起訴などの処分結果を、事件を担当する捜査員が被害者やその家族に連絡する制度です。)の対象となる事件の被害者の場合は、被害者から、処分に関する情報が分かれば連絡をしてほしい旨を伝えておきます。これにより、警察から連絡があります。また、被害者連絡制度の対象にならない被害者からの照会に対しても事実上回答がなされているようです。
 
(2) 送致された検察庁に、刑事処分が出たかどうかや処分結果などを聞く(本人確認ができれば、電話で教えてもらえることもあります)。
→「被害者連絡制度」の対象となる事件の被害者が、連絡を希望する旨伝えていた場合には、起訴、不起訴等の処分結果が警察から連絡されます。
また、「被害者等通知制度」といって、検察官又は検察事務官は、被害者等の取調等を実施したときは、被害者等に希望の有無を確認し、希望する者に対し通知し、さらに、被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大事件については取調等を実施しないときでも、被害者等に通知の希望の有無を確認し、希望する者に対し通知してもらえることになっています。通知を希望する旨を伝えておいた場合、以後、事件の処理結果、公判期日、裁判の結果などについて通知されます。通知を希望しなかった場合でも、問い合わせをすることができます。検察庁への問い合わせの際には、事件番号(検番)か担当検察官の氏名等を述べる必要がありますので、警察の担当者に問い合わせて教えてもらう必要があります。
以上
 
交通事故・後遺障害無料法律相談のご予約 024-528-5780

まずはお電話を!

ご相談の流れはこちら